KEK オンライングループの役割
(Apr-1999 by Hirofumi Fujii)
はじめに
オンライングループは、素粒子原子核研究所における共同利用実験で使用
されるデータ収集システムの維持・開発を業務としている。ここで言う、
データ収集システムの範囲は測定器からの信号をデジタイズした後から、
データを記録するまでを言う。従って、その範囲には
- デジタル回路
- バスシステム
- オンラインコンピュータ
- データ転送システム(データリンク・ネットワーク等)
- 記録システム(磁気テープ、磁気ディスク等)
が含まれる。
概要
オンライングループは、PS各実験で少なくとも1式のデータ収集システム
が使用できる状態に管理・維持している。また、データ収集の骨格となる
ソフトウェアも常時使用可能状態(テスト済みの状態)で管理・維持している。
これらをいかに利用するかは、もちろん実験グループの判断による。そのための
技術的相談にも応じている。技術的不定要素が残っている場合や開発要素が
残っている場合は、実験グループに参加する場合もある。
また、グループ実験室では、共同利用実験者が、各種テスト(次期実験のための
データ収集ソフトウェア開発を含む)を行える環境を用意し、提供している。
ハードウェア、ソフトウェアを問わず、データ収集システムまわりの技術的変化
は極めて速いので、それらの検討、テスト、ソフトウェア開発も業務の一環である。
これらのテスト結果などは逐次 Web page を通じて公開し、KEKのみならず
各大学でのデータ収集システムの開発に一役かっている。
関連業務
データ収集システムと直接の関連は無いが、素粒子原子核研究所内の3つの
ネットワーククラスタ(研究所には全部で6つのクラスタがある)の管理を
行っている。(3というのは、人員による制約(技官3)から。自分たちで
管理できるクラスタ、FT(理論・数値)、FB(B)、FJ(JLC)については、各グ
ループで管理者を出している。)
業務内容
オンライングループの具体的業務内容を示す。
- PS共同利用全般
- PS実験ユーザホームマシン(psux/psux1)維持管理
- (各実験グループへ貸与している)データ収集用コンピュータ維持・管理
- デバイス等関連
- SCSI/TAPE 関連支援
- 実験室まわりプリンタ(ネットワークプリンタ)
- 実験室まわり PC 設定(ネットワーク、ファイル共有等)
- VME 電源クレート(KEK 仕様)開発(完了)
- OS 維持管理
- DEC/OSF-1 関連
- HP-UX 関連
- Linux 関連
- Sun (Solaris) 関連
- ネットワークデバイス関連テスト評価
- DECStation (Ethernet(10/100base), FDDI, ATM ) 関連
- Sun (Solaris) (Ethernet(10/100base), FDDI, ATM) 関連
- Linux (Ethernet(10/100base/G-bit)) 関連
- FDDI-FastEther Switch
- G-bit Switch
- データ収集ソフトウェア維持管理
- UNIX データ収集システム (UNIDAQ) 開発・維持
- JAVA と分散オブジェクト技術を用いたデータ収集システム開発
- Solaris におけるデータ収集システムの評価・テスト
- ネットワーククラスタ管理
- FP (PS)クラスタ
- FI (国際協力 -- Atlas)クラスタ
- FG (物理一般)クラスタ
近い将来
近い将来、PC-UNIX (Linux)によるデータ収集システムが主流になると思われる。
オンライングループでは、数年前からいくつかのスタディを行っており、技術的
には、ほぼ見通しがついていると考えている。また、大学等でも費用が安くすむと
いう点から、普及が進んでいる。しかし、共同利用等に供する場合は、維持・保守
も含めた体制を考えなければならない。従来のワークステーション等と異なり、
ハードウェアにかかる費用が安い分、維持・管理はユーザ側(いまの場合はオン
ライングループ)にかかってくる。また、ソフトウェアもフリーソフトウェアで
あるがゆえに、情報の収集・整理・維持等はユーザ側(いまの場合はオンライン
グループ)に負担がかかってくる。限られた人材でいかにしてこれを行うかが、
すぐにも遭遇する課題になると思われる。
過去の方針
参考までに、
1995年10月に主幹団へ報告した、オンライングループの
役割と今後の方針について(HTML化したもの)を示しておく。
ただし、共通計算機システムがクラスターシステムの集合として、UNIX を中心と
したシステムへ移行する直前であり、また、高エネルギー物理学研究所から
機構への体制移行が議論されていた時代であることを念頭において読むこと。
文責:藤井啓文
(E-mail:keibun@post.kek.jp)