KEK オンライングループの役割
藤井啓文(1995.10.09)
オンライングループは
本所物理実験における測定器からの信号を digitize した後、
data を online 記録するまでの計算機、関連装置、及び
ソフトウェアに関する開発・支援を行うことを主な業務としている。
現在
- データ収集用ワークステーションの管理・運用
- CAMAC インターフェイス、及びドライバー(主に PS 実験)
- FASTBUS インターフェイス、及びドライバー(TRISTAN 実験)
- VME-Channel インターフェイスによる data 転送システム
- VME インターフェイス、及びドライバー
- Unix データ収集システム UNDAQ の開発・管理・運用(主に PS )
- 8mm SCSI tape drive / DAT SCSI tape drive
- 実験貸し出し用 printer
- メディア変換、簡単なオフライン解析用ワークステーションの運用・管理
などの管理・運用を行っている。
また、以下は業務ではないが、関連事項として
- 物理系のネットワーク・クラスター管理
- 物理一般クラスター
- PS実験クラスター
- 国際協力クラスター
- ネットワークプリンタの管理
を行っている。共通計算機のクラスター化に伴い、ネットワークプリンタの
管理はセンター側の管理に移行すべきであると考えられるが、クラスター化
に伴い、クラスター管理の仕事は増えると予測される。
トリスタン実験終了後、あるいは所の体制に変化があったとしても、
最初に述べたオンライングループの基本的役割は変化はないものと
考えられる。
しかしながら、実験規模の拡大、計算機技術の急激な変化に伴い、
データ収集システムも大きく変遷しており、開発等の重点の置き方、及び
ユーザへの支援の在り方も、それに伴い変化してきている。
以下に、今後予想されるデータ収集システムの開発・支援の在り方に
ついて述べる。
PS関連
PS実験オンライン計算機関連
PSに関して、現在 Desktop Workstation から Board Computerへの
移行を進めている。これに伴い、
- 今後センターの UNIX 化が進行するので、解析用ライブ
ラリーの共用ができ、Online グループとしてはデータ収集
プログラムの支援に専念できる。
- ボードの予備を用意することにより、保守・交換の簡略化が計られる。
これらにより、浮く時間を以下の業務に振り向けたい。
- ネットワーク(WWW)によるデータ収集プログラムの公開
サーバを立ち上げ、保守・維持する。
- セントラルデータ記録の支援。に振り向けたい。
ただし、いくつか問題はある。
- Board Computer の今後の動向が明白でない。
- RealTime OS の動向も明白ではない。
- 一方で PC の高速・高機能化・低価格化が進んでいる。
長期的には PC での大規模データ収集を online グループとして study す
べき時期に来ていると思われるが、この点に関しては VAX/VMS から
UNIX への移行を進めた時以上の困難が予想される。解決しなければ
ならない問題は、以下の通り
- OS の選択 Windows3.1/Windows-NT/Windows95 or PC-UNIX
- Bus の選択 ISA/EISA/PCI
- DriverInterface の設計
- UserInterface の設計
- UserLibrary の提供
PS実験のデータ記録システム
PSの記録システムは、従来からセントラルレコーディングが行える
体制が採られていたが、実際に本番実験で使われることがなかった。
これには、いくつかの理由が考えられるが、特に
- ネットワークが特殊であった(特殊装置を必要とした)。
- テープライブラリとデータレコーディングを結び付ける標準的な手法が
確立していなかった。
などが考えられる。
現在、CERNなどでもようやくセントラルレコーディングが行なわれ
始めようとしており、ソフトウェア的には、少なくとも高エネルギー物理学
において、一般的な手法が確立していくと思われる。
また、ネットワークの高速化に伴い、特殊装置を必要としなくなってきた
ので、標準LANを用いたセントラルレコーディングの手法を確立したい。
ハードウェア的には、次期共通系のテープ装置は最高で毎秒12MBの記録が
可能であり、またLANに関しても、Online グループ
による FDDI のテストでは毎秒3MB程度の転送が可能であることが
わかっている。従って、従来の記録システム(最高毎秒1MB、実効
毎秒0.5MB)を十分上回るシステムとなるものと期待される。
BELLE実験関連
トリスタンとの対応で言えば、(人手や体制の問題を無視して)オンライングループが
関与すべき点としては
- コンピュータインターフェイス
- 事象構成器
- オンラインファーム
- データ転送システム
- データ記録システム
などが考えられる。
このうち、コンピュータインターフェイスについては
現在では、VAX 用 FASTBUS interface を開発したような仕事は無いと
考えられる(時間的にも無理であるし、現在では製品の流用が可能)。
オンラインファームについては、すでにトリスタンで伊藤氏により開発は
終了していると考える。
従って、残る問題は事象構成器、転送システム、記録システムと思われる。
事象構成器に関しては能町氏・佐々木氏によるスイッチで十分可能であることが
わかっており、開発はほぼ終了し、プロトタイプテストが行なわれようとしている。
しかし、今後は実機試験、実システムとの接続試験など、人手と時間を要する
事項が多く残っている。一グループや一個人がコツコツ行う段階ではなくなって
おり、体制も含めて議論する必要がある。
データ転送システムに関しては、オンラインファームの出口で一本化してデータ転送
するか、センターまでパラレルに転送するかの検討から行う必要がある。
一本化した場合、FDDI では能力不足なので、高速ネットワークの検討が
必要である。(HIPPI/FC/ATM)
記録システムに関しては、基本的にはPSの場合と同様であるが、データ量が
格段に多いこと、高速性が要求されることなど、技術的に解決しなければ
ならない問題を抱えている。
系内ネットワーク・計算機関連
共通計算機システムがクラスター化することに伴い、各クラスターの
管理・運用は各クラスターでカスタマイズできる体制となる。
これに伴い、共通的な部分は、センター提供のシステムで行われる
ことになると思われるが、各クラスターの実際の運用は「各クラスター
管理責任者」が行うことになる。物理系のクラスターには現在
- PS実験
- 数値・理論
- B実験
- 将来計画
- 国際協力
- 物理一般
がある。このうち、B実験の計算資源は共通計算機システムとは別体制である。
問題は、大実験グループに属さない人達の計算機・ネットワーク環境で、
これを全所共通のクラスター(一般クラスター)に吸収するか、物理一般
として物理で共通化した後、一般クラスターと結合するか、体制も含め議論が
必要である。
現在、「物理一般」には主幹団、回路、オンライン、低温、安全(1、2)、
技術開発、非加速器が含まれている。
文責:藤井啓文