情報処理入門について
(c) Copyright 1996, Hirofumi Fujii (藤井啓文)
Lastupdate: 1996-04-15
私が考えている情報処理入門のシナリオ
(可能かどうかは別として、こうしたいなと思っている)。
(1)コンピュータと情報
- コンピュータは情報処理の道具ではあるけれども情報処理は
コンピュータが無ければやれないわけではない。
- また、コンピュータ上のデータは、情報の一つの表現では
あるけれども、すべての情報を表しているわけではない。
- しかし、コンピュータは情報を処理するための道具として
便利に使うことができる。
(2)コンピュータを使って学習する目的
- コンピュータは情報を処理するための比較的新しい道具である。
- また、従来にない、いくつかの特性を持っている。
- 私たちの社会は、この道具の持つ特性に十分には慣れていない。
- この特性を理解し、それが従来の「常識」をどのように変える
必要があるのか(あるいは従来の「常識」をより一般化する
ことにより理解できるものなのか)を考える。
(3)情報処理の道具としてのコンピュータ
コンピュータを情報処理の道具として捉える時、
- 情報をコンピュータ上で表現すること
- 表現された情報をコンピュータ上で処理すること
が必要である。
(4)情報の基本表現
情報をコンピュータ上で表現するには、私たちの「日常生活」
における情報の表現をモデルにする。即ち、基本的な表現として、
- 文字による表現
- 画像による表現
- 音による表現
- 動画による表現
が可能であることを理解する。
(5)コンピュータ上での表現の特徴
(4)で調べたコンピュータ上での表現が、どのような性質を
もつものなのかを理解する。一般に、情報を提供する側と、
受け取る側との間での(コンピュータ上に記述されない暗黙の)
約束があればあるほど、情報格納スペースは小さくなることを
理解する。
(6)情報のコピー
情報処理の最も基本的な操作である、「情報をコピー」すること
「上書きする」ことを理解する。(「消去」は NULL 情報の
「上書き」)。特にコンピュータの持つ特性として
- いままでの「常識」をくつがえす速度で大量の処理
が可能になっている。
- コンピュータ上に表現した(ディジタイズした)
ことにより、「コピー」や「上書き」による情報の劣化がない。
ことを理解する。
(7)手続き情報
より複雑な情報処理のために、一連の手続きもまた情報として
コンピュータに格納され、必要に応じて再利用されることを
理解する。この一環として、表計算のようなアプリケーション
やプログラミング言語に触れる。
(8)情報の伝達
情報処理の基本操作である「コピー」を一般化して、時間や空間を
隔てた情報のコピーがあることを理解する。日常生活の上では、
時間を隔てた「コピー」は「記録」であり、
空間を隔てた「コピー」は「通信」である。
(9)情報の時間軸への伝達
時間を隔てたコピーでは、「未来において再利用される」
ことが前提である。そのため、「記録した情報を再利用する」
手段が必要となる。
(6−1)で述べたように高速、大量処理が
可能になったため、格納された情報の再利用のための複雑な
関連付けが可能になっている。この関連付けもまた、
情報としてコンピュータに格納され再利用できることを
理解する(−>データベース)。
(10)情報の空間的伝達(ネットワーク)
空間を隔てた情報の「コピー」である「通信」は、
コンピュータの世界では、「コンピュータネットワーク」と
して実現されている。
- 「日常生活」に「手紙」と「電話」という
手段があるように、コンピュータネットワークの「世界」
にも「コネクションレス型」の通信と「コネクション型」の
通信があることを理解する。コンピュータを使っても、
これらの特性は変わらないことを理解する。
- 「日常生活」に「放送」や「新聞」がある
ように、コンピュータネットワークでも「ブロードキャスト型」
や「マルチキャスト型」の通信が始まっていることを理解
する。これらもまた、「放送」や「新聞」が抱える特性を
そのまま持っている(「誤った情報」を「大量」にバラまく
可能性、「異なる価値観」を「一方的に押し付ける」可能性など)
ことを理解する。
- 一方で、コンピュータの特性である「大量・高速処理」も
また引き継がれている。このため、個人ベース
でも「放送局」や「新聞社」になれる可能性がでてきている。
上で指摘した「ブロードキャスト型」や「マルチキャスト型」の
通信の持つ「危険性」は個人レベルにまで、引き下げられている
ことを理解する。
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